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アラビア社創立

アラビア(ARABIA)社は140年の歴史を持つフィンランドを代表する陶磁器ブランドです。しかし、なぜフィンランドの会社なのにアラビア?と疑問に思われる方も多いと思います。
 社名の由来は、1873年ヘルシンキ郊外の別荘地に工場があり、その周辺は通りごとに世界の都市の名前がつけられていて、アラビア通りに工場があったことから「アラビア」が誕生したそうです。

 元の窯はスウェーデンの陶磁器メーカーのロールストランド/Rorstrand によって建設され、その傘下として設立されました。フィンランドの歴史は数世紀に渡ってスウェーデン領の時代やロシア領の時代があり、スウェーデンとロシアの緩衝地帯でもありました。

 設立当時はアラビア社としての技術は決して優れていたものではありませんでしたが、 ロシアへの輸出などが増加し、国内の好景気が後押して急成長したアラビア社はフィンランドの半分以上の陶器製品のシェアを持つに至ります。

フィンランド芸術の黄金期

 1900年のパリ万国博覧会に出展されたアラビア製品が金賞を受賞。アラビアの装飾技術は国内外から非常に高い評価を受け、知名度が高まります。また、この万博では建築家のサーリネンが設計し,ガレン=カッレラがフレスコ画を制作したフィンランドの展示館が注目を浴び、フィンランド芸術の黄金時代とも呼ばれています。 多くの画家や急速に国際的知名度を高めつつあった作曲家のジャン・シベリウスもこの時代の作曲家です。

 さらに、1914年に第一次世界大戦に突入し世界情勢が悪化する一方、ロールストランド社がアラビア社を売却することでアラビア社は1916年に独立を果たします。そして1930年代にはヨーロッパ最大級の陶磁器工場として発展を遂げ、フィンランドを代表する陶磁器メーカーとして地位を確立し始めるのです。そして1917年、フィンランドも国家として独立を果たします。

フィンランドとアラビア社の大転換期

 1920年代にデザイン企画・研究室を設立し、当時スウェーデンからフィンランドへと広まった思想“美しい日常”をコンセプトにしたデザインを取り入れます。
 1930年代初めにアラビアアート部門を設立し、ビルイエル・カイピアイネンなど新進気鋭のデザイナーを雇い入れ、独自のデザインを発展させていきました。

カイフランクの登場

 アラビア社は1945年にアートディレクターにカイ・フランクを迎え入れ、現在まで人気が衰える事の無いTeemaやKartioシリーズが誕生します。
ここで、アラビア社だけでなく世界のデザインに大きな影響を与えたカイ・フランク(Kaj Franck)をご紹介します。

Wikipediaより
カイ・フランク(Kaj Franck, 1911年- 1989年)は、フィンランドのデザイナー。
1932年からヘルシンキの美術工芸大学で家具デザインを学ぶ。 1938年にテキスタイルデザイナー、1945年にアラビア社のデザイナーとなり、1950年に同社のアートディレクターに就任。 陶磁器のデザイナーとして活動していたが、1946年からイッタラ社、1950年からヌータヤルヴィ社(1988年にイッタラ社と合併)でガラス・デザインに携わる。 フィンランド農民の古い文化や工芸品を理想の手本としたシンプルな機能美は「フィンランドの良心」と呼ばれ、今も親しまれている。 実用的なガラス器のデザイナーとして著名であるが、アートガラスや一点物の作品も作成している。 日本においては1956年に私的旅行として来日、各地を訪問している内にその存在の噂が広がり、京都で講演を行っている。そのインパクトは強く、今度は正式に来日を要請して1958年に陶磁器デザインのあり方を問いただした講義内容は日本のデザイン全般にも影響を与えるものであったとされる。
また、カイ・フランクは来日した際、日本の技術に驚き日本人何人かを伴い帰国した。

…とあります。それ以外でも『リサイクル』を提唱したはじめのデザイナーとしても有名です。

 また、現在フィンランドではカイ・フランクが目指した日用品のよりよい刷新を永続的に続けるべく「カイ・フランク賞」を1992年より毎年11月カイフランクの誕生日前後に発表されています。この賞は装飾的なデザインというよりも、日常使用にふさわしい機能美を追求した製品が選定の対象となっており、彼の魂を受けつぐデザイナーやデザインチームに対して贈られています。

 そして、カイフランクの人気の衰える事のないシリーズが数多くあります。

 1953年に発表されたKilta(キルタ)は現在のTeemaの前身にあたり、コンセプトは「均一」です。機能美を追求した無装飾でシンプルなデザイン。しかも丈夫で割れにくくスタッキング収納可能。これまでの常識を覆すようにエンボスや装飾を一切なくしたおかげで、食洗機やオーブン、レンジにも使用できるようになり、食事の際もフラットな底面と側面の立ち上がりにより、盛り付けも食べやすさも計算されています。カラーバリエーションが豊富なので、別の色を組み合わせて使用するのも自由。たとえ壊れてもいつでも買い足せる定番を揃えるなど、使う人の立場に立った設計が隅々まで施されています。

 カイフランクはテーブルウェアの先駆者として、その後のデザインに大きな影響を与えました。

 1981年には、Kiltaの改良版であるTeemaが登場し、Arabia社がiittala社傘下になった現在はiittalaブランドで販売されています。
また、Teemaの人気は衰えることが無く、時代によって裏の刻印のデザインが消えて読み取れないものが多くありますが、希少なヴィンテージとして人気があります。
 Teemaシリーズは鮮やかな単色の色彩で飾り気のないデザインのプレートやカップによそわれた食材一つ一つが映え、日々の何気ない生活の中にハッとするほど美しい色彩にあふれていることに気づかせてくれます。

アラビアフィンランドのデザインが日本でブームに

 そして、2016年に公開された邦画“かもめ食堂”ではアラビア社の24hアベックが使用されていて、日本では不動の人気となっています。デザイナーは Heikki Orvola ヘイッキ・オルヴォラ。フィンランドを代表するデザイナーの一人で、イッタラやマリメッコのテキスタイルデザインも手掛け、様々な分野で作品を生み出しています。1998年にカイ・フランク賞を受賞しています。

そして、今年2017年はフィンランド独立100周年記念製品も登場し、今後も益々目の離せないブランドです。

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